階段の上り下りも立派な運動に 心筋梗塞や脳卒中のリスクが減少 短時間の活発な運動でメンタルヘルスも高められる | ニュース | 保健指導リソースガイド
運動をする必要があると理解はしていても、仕事・家事・育児・介護などで忙しく、「運動の時間をとれない」という人は多い。そういう人も、手軽に運動に取り組める方法がある。
階段を上ることも、立派な運動になる。階段の上り下りを毎日行うだけで、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクは減少することが示されている。
短時間の活発な運動でも、認知機能を高められることも明らかになった。「短時間の活発な運動でも、メンタルヘルスへの効果は高いことが分かりました」としている。
職場や近所の階段の昇降も立派な運動に
運動をする必要があると理解はしていても、仕事・家事・育児・介護などで忙しく、「運動の時間をとれない」という人は多い。そういう人も、職場や近所の階段の昇降であれば、比較的取り組みやすい。
階段を上ることも、立派な運動になる。階段の上り下りを毎日行うだけで、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクは大幅に減少することが示されている。
階段の上り下りを、数分間という短い時間行っただけでも、筋肉や心臓血管の健康を改善できる。
「エレベーターやエスカレーターをなるべく使わないようにして、自分の足で階段を上るだけで、良い運動効果が生まれます。階段の昇降はすぐに取り組める運動で、特別な費用も必要ありません」と、米チューレーン大学肥満研究センターのルー チー所長は指摘する。
「階段を使うことで、トレーニングジムへ行ったのと同じような運動効果を期待できます」としている。
階段を積極的に活用している人は心臓病や脳卒中のリスクが減少
研究グループは、40~69歳の中高年約50万人を追跡して調査している大規模研究である「英国バイオバンク」に参加した45万8,860人を12.5年(中央値)追跡したデータを用いて、階段の昇降と健康状態の関連を調べた。
その結果、階段の上り下りを毎日50段分くらい行っている人は、とくに心血管疾患のリスクが低いことが明らかになった。
階段の昇降をまったくしていないという人に比べ、階段の昇降を毎日16~20回行っている人では、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患、虚血性脳卒中など、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の発症リスクが23%低かった。11~15回行っている人でも22%低かった。
短時間の階段の昇降は「運動のスナック」に
カナダのマックマスター大学による別の研究でも、階段の上り下りを、数分間という短い時間行っただけでも、筋肉や心臓血管の健康を改善できることが示されている。
研究グループは、1日に座ったまま過ごす時間の長い24人の男女を対象に、3階分(60段)の階段の昇降を1日3回行うグループと、行わないグループにランダム分けて比較する4週間および8週間の試験を行った。
「1日に10分という短い時間であっても、階段上りのような負荷の高い運動を、数回に分けて集中して行うことで、健康効果を期待できることが証明されました」と、同大学で運動学を研究しているジョナサン リトル氏は言う。
「これは"運動のスナック"とも言えるものです。座ったまま過ごす時間の長い生活スタイルをもつ人は、コーヒーを飲んだり、トイレに行くための休憩と同じくらいの時間、階段を勢いよく上るだけで、体力の向上を期待できます」。
「オフィスビルで働いている方や集合住宅に住んでいる方は、朝・昼・夕に階段を元気よく上る余裕があるのではないでしょうか。そのことが効果的なトレーニングになる可能性があります」としている。
短時間の活発な運動により脳の健康も高められる
ウォーキングなどの運動を習慣として行っていると、脳の健康を長期的に高められることは以前から知られている。
カリフォルニア大学の新しい研究では、短時間の活発な運動でも、認知機能を高められることが明らかになった。
とくに、負荷の強い活発な運動と、ゆったりとした運動を交互に行う「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」と呼ばれる運動法は、高い効果を期待できることが示された。
「運動に取り組むことで、脳の情報の処理や伝達に関わる神経細胞であるニューロンが形成されるのを促され、認知力が向上する可能性があります」と、同大学心理・脳科学部のバリー ギースブレヒト教授は言う。
研究グループは、運動と認知機能の関連を調べた、4,390人の参加者を対象とした113件の研究をメタ解析した。
「短時間の活発な運動でも、メンタルヘルスへの効果は高いことが分かりました。とくに運動の手順を考えたり、計画を立てたり、注意を集中したり、複数のタスクを同時にこなすような身体活動を行うと、30分未満の短い時間の運動であっても、効果は高いことが示されました」としている。